|
蜘蛛の巣のように世界中に張り巡らされたWWW(ワールド・ワイド・ウェブ)は、いつしか海に例えられ、荒波のような発展のうねりの中で波を自由に乗りこなすサーファーたちが現れ、インターネットを楽しむ事を「ネットサーフィン」と呼ぶようになりました。もはや定着か廃れたかした言葉のようになってしまったネットサーフィンですが、まだまだネットサーファーたちは現役なのです。
ネットサーフィンとは
「ネットサーフィン」という言葉の原点は、1992年に雑誌に掲載されたジーン・アーモア・ポリー氏の記事であると言われています。当時のアメリカではちょうど国内にインターネットが民生用に普及していった時期であった事から、このような記事が登場したのも頷けることです。日本にネットサーフィンという概念が登場するのは、「Windows95」が登場する1995年以降になります。
日本においてのネットサーフィンを巡る流れ
Windows95ブームに見るパソコンのシェアの変化
Windows95は、当時のパソコン用OSとしてはもっともインターネットに適応したOSとして話題を呼びました。つまり「インターネットをやりたければWindows95を買うしかない」とユーザーが思ったのです。これによって、当時「国民機」を標榜していたPC-9801シリーズのシェアはいわゆるDOS/V機に持っていかれ、発売元であったNECはDOS/V機への転換を図る事になります。アップル社のMacintoshもこのWindowsフィーバーに押され、アップル社の創業者であるスティーブ・ジョブスの復帰まで低迷を続ける事になります。
テレホタイムのネットサーフィン
Windows95発売当時、人々がネットサーフィンを楽しむためにはダイヤルアップ接続でインターネットに接続するほか手段はありませんでした。ISDN自体は既に存在していたのですが、基本的には商用だったのでISDNに接続するためのターミナルアダプタの価格の下落を待つしかありませんでした。当時、もっともインターネット接続が盛んだったのは「テレホタイム」と呼ばれる午後11時から午前8時までの時間帯でした。当時はインターネットへの接続が従量課金制だったのでNTTが行っていた「テレホーダイ」サービスを利用してアクセスポイントに接続するユーザーが増大していったのです。この時間帯に接続してネットサーフィンを楽しむユーザーが多くなっていったことで、テレホタイムは「安く繋がるけれど回線が重い時間帯」として、定着していくことになります。
ブロードバンド環境でのネットサーフィン
ISDNを含むダイヤルアップ接続が定着し、各企業も自社サイトを立ち上げるなどインターネットが「からっぽの洞窟」であると言われた時代は過去のものとなっていった頃、ユーザーの間で「もっと転送量が大きくて安定した回線が欲しい!」という声が大きくなっていきました。テレホタイムは人が多すぎてネットサーフィンはおろか、ネット上でのコミュニケーションもままならないほど回線を重くしていたのです。そこで登場したのがADSLやケーブルテレビ網を使用した「ブロードバンド」です。今までのダイヤルアップ環境が片側一車線の市道とするなら、このブロードバンド回線は片側三車線の高速道路のようなものです。渋滞が少なく情報を速く送ることが出来るブロードバンド環境の登場は、私たちの生活にインターネットをより浸透させる原動力になっていきました。
IT革命の寵児「インパク」をネットサーフィンする
そして任期中に倒れた小渕恵三首相の後を受けた森善朗首相によって立ち上げられたのが「インターネット博覧会」通称インパクでした。政府主導の下に、インターネット上で万国博覧会を行い、世界中からのネットサーフィンを集め日本のIT技術を喧伝するというコンセプトで開かれたインパクでしたが、急ごしらえの片手落ちな内容に収まってしまったのでした。
光通信によるネットサーフィンの加速
一方、ソフトバンク傘下の『Yahoo!BB』のADSL参入によって、ブロードバンド競争は事実上決着を見る形になりました。それまで乱立していた個人・中小企業単位のサービスプロバイダは潰れるか大手に吸収されるかして、ネット業界から姿を消してしまうことになります。しかし、ADSLは電話局から離れれば離れるほど速度が低下するという弱点があるため、ユーザーは「もっと速く、もっと安定した回線」を求めていくことになります。そんなユーザーの声に応えるべく登場したのが光回線(FTTH)です。1980年代から「未来の通信網」として注目されていた光ファイバーを使用した通信ケーブルを利用するFTTHは、ADSLの通信速度を大きく上回る上にADSLの弱点であった距離による損失が少ないことなどで、徐々に浸透してきています。
ネットサーフィンから見たインターネット世界の変遷
IT分野において、「ドッグイヤー」と言う言葉がよく使われます。これは犬の年齢での一年は人間の10年に当たることに由来し、「進歩・発展が他の分野よりも速いこと」を表現しています。個人単位での情報発信が可能なWWWの中では、ネットサーフィンしている時には気付かないけれども、一歩退いて眺めると物凄い速さで発展していることに気付かされるのです。そういった、長年のネットサーフィンから気付かされた変化を解説していきます。
レンタルサーバースペース容量の増大
個人でウェブサイトを開く場合、サーバーのスペースを用意する必要があります。インターネット創成期では、ダイヤルアップ接続が主流であったこともあり多くて1M程度のスペースがプロバイダーなどから提供されていました。その後、インターネットの普及に伴いジオシティーズやトライポッドなどの無料サーバーレンタルサービスが増えていき、ブロードバンド全盛の現在では最低50Mという数年前までは考えられないような増量を果たして行きました。しかし、スペース容量に伴い音楽や画像などの大容量のファイルをスペース上に置けるようになったことで、ファイルへのアクセスが集中することで発生する転送量問題が悩みの種となっています。
画像フォーマットの変化
レンタルサーバースペースの変化に伴い、サイト上に置かれる画像ファイルのフォーマットも様々に変化しています。Windows搭載のペイントソフトで描けるBMP形式では、画像のサイズ・使用した色の数に応じてファイル容量が大きくなるため、ファイルサイズが小さくなる画像フォーマットが必要不可欠であるとされてきました。基本的に、大きな画像を扱う際にはJPG形式、小さい画像の場合はGIF形式という住み分けが行われていましたが、1999年頃にGIF形式の権利問題が浮上し「GIF形式を使用すると特許使用料を徴収される」という騒動が勃発しGIF形式の代替となるPNG形式が使用されるようになりました。現在GIF形式の権利は、2004年に失効したので自由に使うことが出来ます。
ネット上でのコミュニケーション手段の変化
インターネットのキャッチフレーズの一つに「世界中の人と繋がる」と言うものがありました。WWWでは、国際電話回線の使用料や国際郵便の切手代が必要ないことを協調した文言であると言えます。電子メールやチャットなどが新しい通信手段として定着していったことで、コミュニケーションの取り方が大きく変化していく事になりました。ICQをはじめとするインスタントメッセンジャーの登場によって、ネットサーフィンの合間などに即時に特定の個人と連絡を取ることが出来るようになり、ボイスチャット・ビデオチャット機能によるインターネット電話としての使用が出来るようになるなど、どんどんと変化を続けています。
ネットサーフィンを彩る映像の変化
ネットサーフィンの目的の一つに、「特定のジャンルに関連するサイトを巡る」ことがあります。そのジャンルの中にはネット世界発祥のものも数多くあります。その代表格がFlashです。かつてはGIFの機能で作られたGIFアニメというジャンルが存在したのですが、前述のGIF権利問題などでジャンルとして衰退していきました。その空白を埋めるように登場したのがFlashなのです。Flashは映像だけでなく音も扱うことが出来、ゲームを作ることも出来るインタラクティブな新しいメディアとして注目され、様々な作品を生み出していきました。O-ZONEの「恋のマイアヒ」をヒットさせたのもFlashムービーによるものであることは有名です。その気になれば、アニメ作品を個人単位で作成できることは「ほしのこえ」を製作した新海誠氏によって証明されていますが、Flashは更に簡単にアニメを製作できるようにしたツールであると言えます。しかし、Flashは容量が大きいためネットサーフィンの障害になると考えられていることもあるため、取り扱いには尚慎重を要すると考えるべきでしょう。
ネットサーフィンで稼ぐ!? 副収入を得る方法の移り変わり
また、インターネットの発展は新しい収入手段としても広く認知されることになりました。ITバブルに乗り時代の寵児となったベンチャー起業者や、アフィリエイトで月収50万という主婦など、「簡単に儲ける手段」「私にも出来そうだ」という感覚を持たせる成功例が次々と現れているのも特徴のひとつです。そんなネットサーフィンを対象にしたネットでの収入手段を見ていきましょう。
クリック保証型広告の時代
ネット広告の原点はこの「クリック保証型広告」にあると言われています。クリック保障型はネットサーフィンで広告のあるサイトにたどり着いたユーザーが広告をクリックすると、サイト運営者と広告会社の間に結ばれた契約に基づき、1クリックあたり○円と言う形でお金が支払われる仕組みになっています。しかし、契約したサイト運営者からの広告クリックや同一ホストからの連続クリック、クリック数が異常なほどに多いと言った場合は契約が破棄されることと、広告費の支払いの問題などで「思ったほど稼げるわけではない」というイメージを植えつけることになりました。
ネットオークションの時代
続いて、ネットで稼ぐ手段として注目されたのがオークションサイトです。自分の持っているものを出品し、高い落札価格をつけた参加者に売るのがオークションの基本ですが、希少価値のあるもの、お買い得感のあるものを出品することで確実に稼ぐことが出来るとして多くの新規参入者を生み出しました。しかし、取引上のトラブルや違法な物品の出品などが相次いだため、オークションサイトからの監視が厳しくなったこともあって、オークションサイトは確実に稼ぐ方法とは言えなくなってきています。
アフィリエイトの時代
そして、アメリカで起業し世界最大のオンライン書店にまで上り詰めたアマゾンが日本に上陸したことなどを受けてネット広告は新しい時代を迎えることになります。それがアフィリエイト(成功報酬型広告)です。アフィリエイトは、大抵の場合広告をクリックしただけではサイト運営者の収入には繋がりません。広告に示された商品などが広告のリンク先で購入されることによって、契約に応じた割合のキックバックが運営者に渡る仕組みになっています。日本ではテレビ番組で紹介される健康をもたらすとされる食品を扱うことで多くのアフィリエイターが収入を増やしていると言われます。しかし、不法な手段を用いて広告収入を得るアフィリエイターも続出していることなど問題が散見されるのも悩みの種といえます。
今この時も、人々はWWWという広大な海をネットサーフィンしているのです。
|