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古来より「自分に顔の似た人間は世界に三人いる」と言われていますが、この言い伝えには続きがあります。……「その三人が一堂に会したとき、全員命を落とす」……。この伝説をなぞるように存在する「ドッペルゲンガー」。自分のドッペルゲンガーを見た人は落命の時期が近いと言われています。
ドッペルゲンガーとは
ドッペルゲンガー(Doppelganger)はドイツ語で「二重に歩くもの」という意味で、「自分に寄り添うように存在するもの」であると言われています。基本的には当事者が見る「もう一人の自分」であると言われています。幾つかの報告例や、小説やドラマなどの創作においてインスピレーションを与える要素として扱われてきました。日本でも「CURE」や「回路」で知られる映画監督の黒沢清氏が役所広司主演で映画化しています。
ドッペルゲンガー目撃の実態
ドッペルゲンガーは当事者にのみ見えるケースと、第三者が視認でき場合によっては会話を交わすことが出来るケースがあります。両者において共通するのは、「当事者に段々近づいてくる」ことです。幾つかの体験談では、「自分を見つめている視線の先にドッペルゲンガーがいた」「ドッペルゲンガーと自分の距離がだんだん近くなっている」「一ヶ月前は自宅から5駅離れた街で見かけたが、一週間前には一駅手前の街で見かけたと言われた」などと語られています。中国では「離魂病」という呼び名で紹介されており、「外出していた夫が妻からの連絡を受けて家に帰ったら寝床でもう一人の自分が寝ていた」というエピソードがあります。
ドッペルゲンガーの容姿
ドッペルゲンガーは、基本的に当事者とまったく同じ姿を持っている存在です。外面的な要素の全てがまったく一緒と言うケースが多く、中には当事者が着た事の無い服装をしていたケースもあります。
ドッペルゲンガーはモンスターなのか?
ドイツなどではドッペルゲンガーは悪事を働く精霊の一種とされ、特定の人物に変身し人ごみに紛れて何か悪事を働くと言われています。例え正体を見破っても変身を繰り返し逃げ延びることが出来るとされています。その性質からシェイプシフター(シェイプシフト=変身)とも言われます。
ドッペルゲンガーの実例
前述の「離魂病」と同じく、日本や世界には幾つかのドッペルゲンガーの目撃談が存在します。また映画や小説などにもドッペルゲンガーを主題とした作品があります。そういったドッペルゲンガーに関するエピソードを紹介していきましょう。
芥川龍之介
日本を代表する作家の一人である芥川龍之介もドッペルゲンガーに悩まされた一人でした。1914年に文壇にデビューした芥川龍之介は、「鼻」「芋粥」「蜘蛛の糸」「羅生門」などの古典作品を現代にアレンジした作品を発表し一躍人気作家として大成します。しかし、私生活では患っていた幾つかの病や義兄の遺した負債などの悩みを抱え、1927年に服毒し35歳の生涯に幕を下ろします。晩年に発表した「歯車」や知人との会話の中で、ドッペルゲンガーを目撃していたことを暗示した発言をしていたことは余りにも有名です。
『奥州波奈志』
江戸時代に発表された本で、この中に代々ドッペルゲンガーを目撃してしまう男の話である「影の病」が載っています。「北勇二という男が帰宅して書斎に向かったところ、衣服から髪型まで勇二にそっくりな男が座っていた。その男は勇二に気がつくと瞬く間に書斎を出て煙のように消えうせてしまった。そのことを勇二は母に話したが要領を得なかった。そして、勇二はその年の内に病に斃れたという。母親が後に語ったところでは『勇二の父も祖父も曽祖父も「もう一人の自分」を見た後帰らぬ人になったので勇二には何も伝えなかった』という」という内容です。ドッペルゲンガーまでもが遺伝するという珍しい例です。
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
「若きウェルテルの悩み」や「ファウスト」で知られる文豪ゲーテもまた、ドッペルゲンガーの目撃者です。ただ、ゲーテの場合は自分のドッペルゲンガーを目撃したのが20代の半ば過ぎで、それから有名な「もっと光を!」の言葉を遺して没するまで50年以上罹っているのです。実際のところ、ゲーテが目撃したドッペルゲンガーは「8年後の自分」で、目撃から8年後に同じ場所で「8年前の自分」を目撃しているという一種のタイムワープ減少だったようです。
『ダーク・ハーフ』
サスペンスの巨匠スティーブン・キングの作品です。キングは一時期「リチャード・バックマン」名義を使い幾つかの作品を執筆していたことがあり、この経験を元に描いたのが「ダーク・ハーフ」なのです。内容はというと、売れない純文学作家ボーモントが別名義でバイオレンス小説を書いたところ大ヒットしてしまいます。しかし、ボーモントは自分のやりたいことで身を立てる決意をし、編集者と話し合いの結果別名義である「ジョージ・スターク」を葬ることにします。しかし、実在しないはずのスタークは独立した存在となりボーモントの前に現れ入れ替わりを企むのです……。「ドラえもん」の「フエルミラー」のエピソードのように、「もう一人の自分が現れ、入れ替わろうとする」ドッペルゲンガーの変形ですが、キングの筆力で克明に描き出されているのが特徴です。
『仮面ライダーカブト』
2006年から放送開始した仮面ライダーシリーズ35周年記念作品です。7年前に落下した隕石によって渋谷が壊滅した世界で、人類は「ワーム」と呼ばれる謎の存在と人知れず戦いを続けていました。ワームに対抗するための「マスクドライダーシステム」の第一号・カブトゼクターは『天の道を行き、総てを司る男』天道総司の手に渡り、ワームとの戦いは新局面を迎える……というストーリーです。作品中ワームは「擬態」能力を使い、人間の姿を奪いその人間と入れ替わって活動する描写があります。作品コンセプトの一つに「ドッペルゲンガー」を示していることからも判るように、シェイプシフターとドッペルゲンガーの性質を併せ持つ存在を描いているのです。
ドッペルゲンガーを見てしまった場合、対処する方法はほとんどありません。しかし、精神病の一種に「自己像幻視」という症例があり、『たとえ自分以外の人間や物体であっても、それがもう一人の自分自身と感じてしまう』のです。芥川龍之介が晩年に悩まされていたドッペルゲンガーもこの自己像幻視によるものだったのではないかといわれています。
もし、皆さんが自分か他人のドッペルゲンガーを見てしまった場合は……。
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